builderscon 2019に行ってきた(3)〜本編2日目(最終日)〜

最終回です。前回までの内容はこちら。

note103.hateblo.jp
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例のごとく、朝から淡々と綴っていきます。

昼食ゲット&朝食・コーヒー

8時半頃に起床。前夜の懇親会はサクッと帰ったこともあり、体調は快調。前日に続いてランチ券は早いもの勝ちだったので、たしか9:40ぐらいには会場についてボーっとしているうちにランチ券配布開始&即ゲット。

前日のランチはイタトマ、そしてスポンサーセッションは先述のとおり以前に何度か体験していたので、この日はアカツキさん提供のお弁当にしました。

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ゲット。

朝食&コーヒーコーナーも前日に続き展開。

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見事な飾り付け。みんな写真撮ってから食べてる。

ケータリングのスタッフさんに挨拶したら、ツナのがおいしかったですよ、と教えてもらったので早速頂きました。ありがとうございました。

午前のトーク

クレジットカードの通信プロトコル ISO8583 と戦う

前日のオープニングは10:50からでしたが、この日は10時半から。朝食&コーヒーはほどほどにして、最初のトークはこちらにしました。

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もしこれが裏じゃなかったら、柴田さんの以下にしたところですが、

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数日前のスピーカーディナーでこの話の予告を聞いて、

と思ったので。

果たして、これは聞いてよかった! と思う面白さでした。知らないこと9割ぐらいでしたが、バイナリや16進数の読み方なんかも詳しく教えてくれて、こんなん日常的にやってるの、すごい世界だな(笑)と。

上記のトーク概要ページにもありますが、カードブランド、イシュア、アクワイアラといった各立場の関係性などもざっくり解説されて、この辺の話の入門編みたいになっていたのも良かったです。

Protocol Buffersのスキーマを利用した開発

次に見たのは、そのまま同室で展開されたこちら。

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上記に続いてまったく下地がないまま、「わからないから聞いてみよう」という感じで聞きましたが、案外「まったくついていけない」みたいな感じでもなく、概要を追いながら最後まで楽しめました。

プロポーザルの方には以下のようにありましたが、

またGo初心者、proto初心者の人が自分でもできそうだと感じてもらえるような発表を予定しています。

まさにそんな感じでしたね。以前にちらっとGo言語をかじっていたのも良かった気がします。

Predictive Prefetching for the Web

その後は会場をメインホールに移して、こちら。

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通訳ナシの英語トーク、かつこれもまったく馴染みのないGuess.jsという技術に関する発表で、正直ぼくの知識で話の全体像を追いかけるのはなかなかハードでしたが、こんな発表普段そうそう聞けるものではないので、「わかるか/わからないか」ではなく「逃せるか/逃せないか」の基準で聞くことに。

スライドが丁寧に作られていたので、ぼんやりながらイメージは掴めたと思います。ずーっと新鮮な感覚を抱きながら聞きました。

そのスライドです。

docs.google.com

ご本人のTwitterより。

おつかれさまでした。

ランチ

そんな具合に、朝からかなり濃密な午前トークを経てお昼。

朝イチでゲットした前述のお弁当を頂きました。

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中身は魚の南蛮漬けみたいな感じ。

アカツキさん、ありがとうございました。

その後はあらためて休憩部屋へ。昨日から続いていたアンケートの結果をチェックするなど。

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紙書籍vs電子書籍(右側)は拮抗。

午後のトーク

スーパーカミオカンデの開発と運用

午後イチはこちらへ。

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普段はスーパーカミオカンデのことなんて考えもしない私ですが・・今回のこれは逃せないのでは、と思って聞くことに。

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開始前。右下の9画面パネルがすごい存在感。

スライドが公開されていました。

http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/~hayato_s/20190831_Super-Kamiokande.pdf

感想ですが。とにかく、ものすごく面白かったです。早戸さんの話しぶりはのっけから観客をグッと引きつける魅力に溢れていて、このテーマについて喋る様子がとにかく楽しそう。終始生き生きしていて、そのまま空中に浮かび上がってしまうのではないか、と思うぐらいに話は弾み、聞きながらこっちもどんどんその楽しい方に連れていかれる感じでした。

話の内容も、言ってみれば中学・高校で習うことの延長みたいなところから始まって、少しずつ話の本題・核心に近づいていくような丁寧な構成で、実際には、会場の反応を見ながら内容や難度を調整されていたようですが、ぼくにとっては全然知らない世界の話のようでありながら、実際にはすでに知っていることの地続きとしてそれらの話がある、というイメージが伝わってくるようで、複雑で大変ではあるけれどけっして難解ではない、誰にでも関係のある興味深い話。として最後まで響きまくって聞きました。ああ、本当にあっという間! あっという間だった!

ちなみに、この日の懇親会(アフターパーティー)で少し早戸さんとお話しする時間があったので、「よくあんなふうに人前で喋ったりするんですか」と聞いたら、見学会のときなどに話すことはあるけれど、そのときには一般の人たちを対象にするので、こんなに専門的なことは話せないんですよ、とのこと。

今回ももう少し難度を落とす選択肢もあったけど、多少専門的になっても会場のウケがよかったので、そのままけっこう突っ込んだ話をした、みたいなことをおっしゃっていました。実際に会場にいた感触としても、まさにそんな感じでしたね。

ああ、それにしても、繰り返しになりますが、面白かった!!自分がこんな分野の(物理学ですか)話を面白く感じるなんて。まったく意外。

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あの大会場が満員に。

Peddle the Pedal to the Metal

続いて、同じメインホールでこちらを聞きました。

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ここで開始前の客入れ(?)の演奏をどうぞ。

何か楽器みたいなものを持って歩いてるなあ・・と思っていましたが、これだったんですね。

肝心の発表ですが、こちらもスライドが公開されています。

http://highlandsun.com/hyc/20190831-BuildersCon-Metal.pdf

具体的なことはあまりわからないんですが、ようは開発するときの心がけというか、念頭に置いておくべきこと、みたいなことを具体的なことから抽象的なことまで、次々示してもらった感じかなと思いました。

で、ぼくはこの話を同時通訳で聴きながら、つまり、さっきの早戸さんの話に続いてこれを聴きながら、「ああ、ぼくももっと物を作らなきゃ、プログラムを書かなきゃいけない」と心の底から、なんというか、体の中に静かに電撃が走るように、そう思いました。

ぼくはプログラマーとして働いているわけではないので、日中はあんまりそういう時間を取れないんですが、そんなことはどうでもよくて、とにかくどれだけ限られていようが捻出できたその自由な時間を使って、べつに何に認められるためとか、どこかに提出するためとか、あるいは給料を上げるためとかでもなくて、この自分に与えられた貴重な命を最大限に生き尽くすためには、もっと遠慮せずに物をどんどん作っていかなきゃいけないんだ、と痛感しました。

それをしないことには、いま目の前で展開されている、この耳に入ってきている発表、その言葉をほとんど活かすこともないまま死んでしまうではないか・・と。

これはほとんど啓示とも言える激レアな考えの到来で、自分でも「ああ、なんか今、今までに考えたことがない、初めて考えることを考えたわ」と思いました。

さっきの早戸さんも、このChuさんも、見ていてすごく「ああ、自由だなあ」と思ったんですよね。で、その自由さというのは、彼らが彼らのやるべきことをひたすら徹底して、どんな障害が立ちふさがろうともそんなものには負けずに(あるいは負けても)やり続けてきたことの末に獲得されたそれなんだろう、と強く感じたのでした。

今回のbuildersconはぼくにとってそういう、その人にとっての最前線(=結果的に、その界隈にとっての最前線でもあるその場所)をひた走る人たちの背中を目撃する場だったんだな、と思っています。それを目撃することにより、「なんてこった、こんな世界があったのか! 知らなかった! 知らなかった!」と驚いて、もうただ唖然として、その後にしかし、いや驚いてる場合じゃない、このままじゃ一生今自分がいるこの場所から動けない、なんでもいいから、なんか今すぐに何でもいいから作らなきゃ・・という、そういう気持ちにさせられる場所だったと思います。

Oxygen Not Included: Making a Game That Inspires Science

そんな気分に飲み込まれながらも時間は進み、いよいよ最後のセッション。Twitter社の@niwさんによる以下の発表と迷いましたが、

builderscon.io

そのままメインホールにとどまって以下を聴きました。

builderscon.io

やっぱり、とりあえず英語のセッション聞かないと、というのが大きかったですね。

テーマでもあるゲーム「Oxygen Not Included」については主宰の牧さんによるこちらのエントリーが概要を把握する上で役立つと思います。

medium.com

発表では実際に動く画面を見ながら、様々な知見が紹介されていて楽しく見ることができました。

個人的には、サンフランシスコにあるエクスプロラトリアムという博物館のことを想起しましたね。

www.exploratorium.edu

この博物館の紹介記事としては、以下がわかりやすいです。

artscape.jp

じつはぼくは昨年、以下のイベントに関連して同館のディレクターさんが参加するトークセッションの採録記事を作ったんですけど、

special.ycam.jp

その記事はまだ公開されてないので😅そのうち公開されたらこの辺にあらためてリンクを入れておきたいと思います。

話を戻すと、同館も主に子どもたちが日常に存在する様々な自然現象を自分たちの手で発見・理解していけるように工夫をこらした活動をしているので、それと思想的なところが近いかな・・と思ったんですよね。若いディレクター、クリエイターたちが運営していることも含めて。

ONIのチームは、見たところエクスプロラトリアムよりもさらに若く、またさらに少人数で活動しているようなので、まったく同様の感じとまでは思わなかったですが、もし時間が余ったらその辺の質問もしようかなと思っていました。(結果的には質疑応答も盛況だったので、その機会はなかったですが)

LT

休憩を挟んで、最後のLT。どれも良かったですが、とくに印象深かったものについて触れておきます。

ScalaMatsuriの話@Hameeの方

とにかく話が面白かったです。スライドもだいぶ作り込んでありましたが、それを活かす話芸がまたすごい(笑)。今回のLTで一番笑ったのはこちらでした。スライドも少し探しましたが、わからず・・LTの動画はアップされるのでしょうかね? されるならまた見てみたいところですが。

@karupaneruraさんによるカンファレンスのタイムテーブルの話

おなじみ@karupaneruraさんによる発表。こちらはスライドがありました。

speakerdeck.com

タイムテーブルの標準化というか、みんな同じことしてるんだから力を合わせてもっとラクになろうよ、みたいな感じでしょうか。まさにエンジニア精神そのものという感じもしますが。

モノもすでにだいぶ動くものになっていて、これが実力というのか地力というのか・・毎度のことながら感心しました。

@aomoriringoさんによるMathematicaトークへのアンサー

ここまでのLTでは上記のScalaMatsuriの余韻というか衝撃が一番強かったのですが、この発表がまたすごすぎて、結果的に一番心を動かされたのはこちらでした。とにかく話も面白いんですが、内容もきっちり本編のトークを受けていて(というかそれが今回のLT全体の通底テーマでもあったわけですが)、かつ構成的にも何重もの仕掛けが準備されていて、驚きに次ぐ驚き。笑ったり感嘆したり忙しかったです。

Mathematicaなんてこのbuildersconに来るまではその名前すら知りませんでしたが、まるまる5分間、終始楽しみました。グレイトLT!

クロージング

今回のbuilderscon、これまでにない様々な趣向が凝らされたカンファレンスでしたが、個人的にこれは良い変化だなと思ったのは、今まで恒例だった「ベストトーク賞」がなくなっていたことでした。同賞はカンファレンス参加者が投票して「これが1番」というのを決める企画ですが、発表する会場の大きさによって聴いてる人の数も違うし、公平性にはややギモンのあるもので、あくまでお祭りの余興として楽しみましょう、的なものでしたが、ぼく個人としても、先日のRubyKaigiではやっぱりそういうものはなくて、ただ興味のあることについて発表しまくるっていうそれがすごい心地いいっていうか、だから逆に「多数決で順番つける」とか意味あるのかな・・みたいに思い始めていたところなので、この判断というか方針は、すごく良いと思いました。

と同時に、でも余興の部分、あるいは発表者になんらかのインセンティブというかモチベーションを与えたいという観点で「盛り上がったで賞」を作ったというのもやはり「さすが」という感じで、さらにその結果として、今回は早戸さんが選ばれたというのもまったく納得でした。だって本当に、あれはとてつもなく盛り上がりましたからね。

で、牧さんのその発表もいい感じで進んで無事閉会。となったのでしたが、ええと、それはそれとして、最後に個人的に勝手に期待していたんですが、いつもって最後にスタッフさんが壇上に上がりませんでしたっけ? 今回、ぼくはてっきり最後にみんなが上がってくるものだと思って拍手する気満々で待っていたのですが(笑)。それってRubyKaigiだったっけ・・?

ともあれ、何しろスタッフあってのbuildersconですから、最後にスタッフみんながステージに上がって大団円になれば、よりその時点の自分の気分にフィットしたかな〜と思いました。

という流れでここに書いておきますが、スタッフの皆さん、ありがとうございました&おつかれさまでした。

アフターパーティー

終演後は会場とは駅を挟んで反対側のダーツバーでアフターパーティーでした。

ぼくは一旦荷物を置きに宿へ帰って、少し休んでから向かいましたが、それでもちょっと早かったようで、まだ店にbuildersconのスタッフはおらず、同じく早めに着いていた見知らぬ参加者の人たちと店の前で「もう入れるんですかね・・」とか話しながら、結局とりあえず入って待ってよう、ということになってスタッフ陣が到着するまでそのまま店の中で歓談。

このアフターパーティー、とにかく自分にしては珍しいぐらい未知の人たちと喋りましたね。とくにそういう方針を立てていたわけではないんですが、知ってる人はすでに知ってる人同士で喋っており、そこに混じっていくよりは、見知らぬ人に話しかける方がハードルが低かったので・・。

そんな中、会の終盤にハイジ・インターフェイス(株)CEOの@nyontan氏としばらく話せたのは嬉しかったです。じつは本編の中で繰り返し流される各スポンサーのCMのひとつにハイジさんのCMもあって、こんな感想ツイートを流していましたが。

これを見て声をかけてくれたそうでした。元々YAPCやbuildersconで流れるスポンサーCMって毎回見応えがあって、今回もまたどれもクオリティが高くて良かったのですが(映像も音もオシャレ)、そんな中で流れるハイジさんのCMはなんだか目指す方向がちょっと独特というか、他にはない感覚が効いてて気になっていました。そういう感想を直接お伝えできたのは良かったなと。

あとは最後に牧さんに話しかけて、しばし歓談。牧さんにはほんの少し前まで『WEB+DB PRESS』への寄稿に際して記事の監修をしてもらっていたので、その御礼なども。考えてみると、ぼくは対面で牧さんと喋るのはこれが初めてでした。個人的には2013年のYAPC::Asiaの頃からずっと知っていたので、なんというか、感慨深かったですね。

酒セーブ

ところで、この最後のパーティーも含めて、今回は最初のスピーカーディナーから4夜連続でお酒を飲んでいたわけですが、なんと各日お酒は2杯まで(前夜祭は缶2本)にとどまりました。

これってぼく的にはだいぶ珍しいというか、少ないというか、いつもなら調子よく遅くまで飲み続けてしまい、そのまま翌日に破滅するパターンが多くて、とくにこういう飲みの席だとそれを重めのレベルで律儀に遂行しがちだったのですが、今回はこれをだいぶ減らして翌日の二日酔いはほとんどゼロ!&圧倒的な軽快さを実現できたので、今後も外での酒量は減らしていきたいなあ・・と思っているところです(誰にともなく)。

全体的な感想

では最後に、builderscon 2019全体の感想を。

一番大きな成果は、この記事の真ん中ぐらいに書いた、早戸さんとChuさんの発表を連続で見たあたりで感じた啓示みたいなやつですね。あの気づき。たぶんすぐに忘れそうですが、それでもよくて、そう思ったときがあった、ということが大事だと思っています。

それから、これは前夜祭の最後の発表とも少し関係するかもしれないですが、女性の発表者がちょっと少なかった気がしますね。というか、参加者自体、女性の割合が少なかったのだと思いますが。女性がもっとその存在をアピールしやすい土台が必要なのかな、と思いました*1。ではそのために、自分には何ができるのか? という問題も生じるわけですが、こういうところで言及するだけでも小さな貢献になるんじゃないかと思って、書いておきました。

もう一つ、前回は今回に比べると大会場で、英語スピーカーや同時通訳のセッションも多く、一大イベント!という感じがありましたけど、今回はそれに比べるとコンパクトで、手作りな雰囲気が強く、そのぶん見本市とか、その他ここまでに書いたようなチャレンジングな企画が多くて、「自分たちのイベント」という感じが色濃かった気がします。

あんまりイベントとして大きく、また完成度が高くなると、参加者の方がちょっと「お客さん」になりがちというか、ボランティアスタッフとの乖離が生じがちな気がしますが、今回はそういう雰囲気をほぼ感じなくて、参加者とスタッフが一緒に作ってる感じがいつも以上に醸されていたように思いました。

次回以降、またどういう風に進化するのかわかりませんが、今回のそういう雰囲気は良かったなと。

と、いうことで、長くなりましたがbuilderscon 2019の感想はこれで終わりです。

あらためまして、参加者・登壇者・スタッフの皆さん、その他関係各位、ありがとうございました!!

*1:もちろん男性とも女性とも言えない人も含みます。