こちらは『フィヨルドブートキャンプ Part 1 Advent Calendar 2024』の 6 日目の記事です。*1
昨日の担当は Obregonia1(オブレゴニア)さんでした。
www.obregonia1.com
Obregonia1さんは音楽に詳しくて、去年のRubyKaigi(in 松本市)の #RubyMusicMixin2023 でDJしてるのを会場で聴いたことをよく覚えています。福岡に拠点を置きながらKaigi on Railsのオーガナイザーをするとは凄いですね。
さて、ここ数日は卒業生のブログが続いていましたが、今日は絶賛受講中の私が入会から約1年半経った現時点で、フィヨルドブートキャンプ(以下「FBC」)にどのように取り組んでいるのか、ざっくり語ってみたいと思います。
自己紹介
これまでもアドベントカレンダーに参加したことは何度かあるのですが、FBCのアドベントカレンダーは初めてなので少し自己紹介をしておきます。
私は現在都内の IT 企業に勤める会社員で、主にカスタマーサポートとインハウスの編集者をしています。その前はフリーランスの編集者として、音楽家の坂本龍一さんと以下の CD ブックを 10 年作っていました。
www.commmons.com
その 10 年間のちょうど真ん中あたり、2013 年になんとなくプログラミングを始めて、そのときのことは以下に書きました。
note103.hateblo.jp
それから今まで 11 年半ほど、趣味のプログラミングを続けています。そして今から遡ること 1 年半前、つまりプログラミングを始めてからちょうど 10 年を迎える頃、もう独学でこれ以上の向上は見込めない……と思って FBC に入りました。
プログラミングをやりたくない
私はもともと、自分がプログラミングに向いていると思っていました。エラーが出るのが苦にならず、何時間でも自分のコードを直し続けることができたからです。しょうもないエラーの原因に気づかないまま、朝までプリントデバッグを続けたことも数知れません。
しかし FBC に入って半年ほど経った頃、なんだか調子がおかしくなってきました。「よし、今日も頑張るぞ!」という気に全然ならないのです。初めは仕事が忙しいからとか、プライベートでイレギュラーなことが重なったからとか、そういう外的な要因によるものだと思っていましたが、調子はなかなか戻らず、「明日でいいや」とプラクティスを後回しにする日が何日も続きました。
そして気がついたら、ひと月に数回しか日報を書かないような状態になっていました。「日報」とは、「今日はこんなことに取り組んだ」という記録をまとめて公開するFBC内のブログのようなものです。それを 1 ヶ月に数回しか書かないということは、あとの大半の日は何もしなかったということです。
退会か、休会か
この段になって、私はようやく焦りを感じはじめました。端的に言って、「お金がもったいない!」と思ったのです。
FBC の利用料は月に 3 万円弱です。これは他のプログラミングスクールに比べれば良心的だと思いますが、通常のサブスクサービスに比べれば相当な額です。月額500円とかのサブスクならともかく、月に 3 万円も支払って、やったことが日報をいくつか書くだけではまったく料金に見合いません。必然的に、退会や休会をすることも何度も考えました。
しかしそのたびに、私は「このまま終わることはできない」と思いました。その一番の理由は、「恥ずかしい!」という気持ちがあったからです。もちろん、やめること自体は何も恥ずかしいことではありません。「お金がもったいないから」というのも立派な理由です。しかし私は、それまでにプログラミングに関する考えをFBCの内外で盛んに主張してきましたから(このブログもそのひとつです)、ここでやめたら、「今まで偉そうに言ってたのはなんだったんだ!」と思われるのではないかと思いました。
実際には、そんなことを気にするのは私一人です。それはわかっているのですが、それでも私はこんなに中途半端な状態で放り出すことを自分に許せなかったのです。
そして、どうしたらやめずに済むのか、どうしたらプラクティスを続けていけるのか、真剣に考えるようになりました。
そういうものだから
私を悩ませていたのは、「なぜ自分はプログラミングが好きなはずなのに、FBC のプラクティスをやる気にならないのか」ということでした。本当なら、毎日ワクワクしながらプラクティスに取り組んでいるはずなのに、なぜそうならないのかと思いました。
最初に思いついた理由は、「だって、人間ってそういうものじゃん」ということでした。人は目の前に『やらなきゃいけないこと』と『やらなくてもいいこと』があったとき、『やらなくてもいいこと』の方を取るものです。漫画やゲームやSNS、どれも『やらなくてもいいこと』ですが、息抜きといえばこれに限ります。『やらなきゃいけないこと』を、わざわざ自由な時間にやろうとは思いません。
その法則を適用するなら、FBC は私にとって『やらなきゃいけないこと』だったからこそ、やりたくなかったのだと考えることができます。私はプログラミングが嫌いなのでも、FBC が嫌いなのでもなく、人間だから、『やらなきゃいけないこと』をやりたくなかっただけなのだと。みんなもそうでしょ? そうだよ、みんなだってそうだよ、と。
我ながら、これは自分を全力で肯定する良いアイデアだと思いました。しかし、なんの解決にもなっていません。しょうがないのはわかった。みんなだってそうなのかもしれない。でも、じゃあこれからどうするの? という問題は未解決のままです。そこで私は、もう少し考えてみることにしました。
こっちは金払ってんだから
次に思いついたのは、「こっちはお金を払ってる側なのだから、何もしなくてもすでに責任は果たしてる」という理屈です。これは私がプラクティスを後回しにしている間、しょっちゅう自分に言い聞かせていたことでした。
もしこれがお金をもらって取り組む「お仕事」だったら、「お金をもらっておいて何もしない」というのは万死に値する行為です。そんなに無責任な行為ってないですし、途中で退会することすら恥ずかしく思う私ですから、せめて受け取ったギャラに見合うだけのことはしようと頑張るはずです。
しかし、私はFBCではある意味お客さんの側ですから、自分のプラクティスが進まないことで誰に迷惑をかけるわけでもないですし、少なくとも責められるいわれはないだろうと思っていました。実際、仕事でいつまでも何もしなければ督促の嵐に襲われますが、お金を払う側の人が何もしなくても誰からも督促を受けることはありません。
この発想は非常に力強く、そして幻惑的に、「何もしない私」を肯定してくれました。そうだ、私はお金を払ってる側なんだから、何もしなくても良いのだ! と。
ただ、それはそうかもしれないけれど、「それが君のやりたいことだったのか?」と聞かれたら言葉に詰まります。というか、「いえ、それは私がやりたかったことではありません」と答えるしかありません。そこで私は、再び事態を解決するための答えを探しはじめました。
もしもオフラインだったら
そして思いついたのは、「もしかして、FBCがオンライン形式だから後回しにしやすいのでは?」という素朴な仮説でした。もしFBCがリアルな教室で受講するオフライン形式だったとしても、私は今のようにプラクティスを後回しにしたり、「なかなかやる気にならない」なんてことを言っていただろうか? と思ったのです。答えは、No です。
もし平日は仕事が終わってから、土日は午前と午後に 3 時間ずつ勉強するような場所だったら、私はもっと早くにやめているか、文句を言うヒマなどなく、ただ目の前のタスクを必死にこなしていたに違いないと思いました。
そしてそれに比べたら、今の私の環境はあまりにも恵まれたものだとも思いました。何しろ、ずっと家でやることができます。時間も完全に自由です。いちいち外出の準備をしたり、雨の日も雪の日も電車を乗り換えて通うような必要もありません。スキマ時間にコードを書いて、疲れたらそのまま眠ってしまうこともできます。こんなに恵まれた環境なのに、一体何が不満なのか? と思いました。
そこまで考えたところで、私は突如雷に打たれたように、ある天啓に貫かれました。「あ、そっか、FBCって学校なんだっけ」と気付いたのです。
やる気がなくても、やる
それまでの私にとって、プログラミングとは「趣味」であり、「遊び」でしかなかったので、「やりたいとき」に「やりたいこと」をやっていました。だから、やる気があるのは当たり前だったのです。
一方、FBC のカリキュラムはこちらの意思とは一切関係なく作られているので、自分がその時にやりたいこととはどうしてもズレがあります。だから、それに興味を持てなかったり、面白いと思えなかったりするのも当然のことでした。
私はFBCで、それまでと変わらず「遊びとしてのプログラミング」をやろうとしていました。遊びの前提なので、「やる気」がなければやりたくないですし、「楽しそう」とか「ワクワク感」がなければやる意味がないとすら思っていました。しかし、FBCが提供するのはそういったものではありません。FBCが提供するのは、卒業する頃には誰でも一定レベルの技術や知識を身につけられるカリキュラムであり、その道中を伴走するメンターさんであり、それらを成立させるシステムだったのです。
ですから、「楽しくなければやる意味がない」などと考えるのはまったくお門違いで、本当に必要なのは、「やる気がなくても、やる」ということでした。それは小中学校のような義務教育、あるいは資格の予備校や自動車教習所に通うように、「行かなきゃいけないから行く」というスタイルで取り組むということです。
これに気づいたときから、私はほとんど毎日のようにプラクティスに向き合い、日報を書くようになりました。この記事を書いている時点で、私は 5 週間続けて、週に 5〜7 日の日報を書いています。しかも、それほど無理はしていません。「やる気」に頼るのをやめて、毎日大体同じ時間に、ほぼ自動的に取り組めるようになってきたからです。
さらなる取り組みに向けて
結局のところ、「成果」というのはそれにかけた時間に比例するものなのだと思います。FBC の卒業生たちの合計学習時間は、大半が 1,000 時間以上、中には 3,000 時間近く費やしている人もいます。しかし停滞していた頃の私の学習時間は、合計で 250 時間にも届いていませんでした。私のプラクティスが進まなかったのは、何も高尚な理由によるものではなく、単に「やってなかったから」だったのです。
さて、ではどうすれば、多くの時間を FBC に費やすことができるのでしょうか。
それは単純なことで、FBC の優先度を上げれば良いのです。私の場合は、FBC を「学校」として再認識することにより、それを実現しました。そしてこれをさらに推し進めるなら、「他のやりたいことより FBC を優先する」、あるいは「他のやらなきゃいけないことより FBC を優先する」ということになるでしょう。いずれもそう簡単にできることではありませんが、もしそのように取り組めたなら、きっとその犠牲に見合うものが手に入るはずです。
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今回の記事はここまでです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
明日の『フィヨルドブートキャンプ Part 1 Advent Calendar 2024』の担当は、kyokucho1989 さんです。お楽しみに!
*1:Part 2もあります。合わせてどうぞ。 フィヨルドブートキャンプ Part 2 Advent Calendar 2024 - Adventar