2019/01/26(土)に開催されたYAPC::Tokyo 2019に行ってきました。
以下、順不同に(思い浮かべた順に)感想を書いていきます。
本編
tokuhiromさん
いきなり最後ですが、tokuhiromさんのキーノート、とても良かったです。
以前にもtokuhiromさんのトークをYAPCで聞いたことがありますが(Perl6の話をしていたような)、そのときの印象と変わらない落ち着いた話しぶり。
過去を振り返る流れでいろんな写真が出てきたのも良かったです。何度か直也さんの名前や写真が出てきたのも共感するところがありました。あのサトちゃんのアイコンじゃない顔写真だったのが良かったな、と。
tokuhiromさんのスライドはこちら。
www.slideshare.net
LINEさんの振り返りブログでも紹介されていました。
engineering.linecorp.com
大仲さん
はてな id:onk さんの「Perl on Rails」。超よかったです。ぼくが先日入社したヴェルクはRailsを使っているので、逆方向の関心にもとづいて聞けたというか。
予定より早く終わっちゃったと言っていましたが、その分後半は藤井さん(?)とのかけ合いが第2部みたいになっていて、トクした気分で聞きました。
mixi 萩原さん
ランチセッションのmixi編、なんと21才(でしたっけ)の入社間もない萩原さんのトークも大変聞きやすい丁寧な話しぶりで楽しく聞きました。
*mixiさんの振り返りブログはこちら。
medium.com
後述の自分のLTの不安定感を思うと、「この差は一体・・」というぐらいの落ち着きを感じましたが、ん〜、練習量とかが違うのかなあ。
Perlの話も随所に入っていて、最後まで興味が持続しました。「若い人がPerlを使ってるという話をしたら、既存のコミュニティの人たちが喜ぶのでは」という目論見は見事に当たったのではないか、と思います。
深沢千尋さん
深沢さんはぼくの恩師とも言えるPerl入門書の執筆家で、これまでもこのブログでは事あるごとに深沢さんの著書を紹介してきました。
今回はその中でもとくに思い入れが深い『すぐわかるオブジェクト指向Perl』を持参して、サインしてもらいました。
前夜祭や懇親会でもいろいろ思いの丈を伝えられて、嬉しかったです。深沢さんの本はある種、革命的に丁寧で、かつその文体もオンリーワンのオリジナリティで、誰も真似できない唯一無二の著者だと思います。
ランチセッションも楽しく聞きました。途中で北野宏明さんの名前が出てきましたが、たまたまぼくが今やっている編集仕事(春頃にWebで公開予定のコチラの採録記事)の関係で北野さんのことを少し調べていたので、不思議な縁だなと思いながら聞いていました。
hitodeさん
この辺りの時間まではずっと下のホールで聞いていましたが、後述のtecklさんの話を聞きたいなと思ったので、上の階に上がってRoom1に入ると、この界隈で知らない人はいないhitodeさんの発表が始まるところでした。
*発表資料はこちら。はてなブログの記事がそのまま資料になっている・・。
blog.sushi.money
WebVRの話ということで、ヘッドマウントディスプレイの実物が回覧されてきたので装着しましたが、これはビックリの面白さでした。上下左右の360度に対して画像・映像が付けられていて、下を見たらフワ〜って布団に寝たhitodeさんが浮き上がってきてこっちにぶつかって、そのまま空に舞い上がっていくという仕掛け(?)が施されていて衝撃でした。ああ、面白かった。
わいとんさん
hitodeさんに続いて、Perl入学式でもその初期からずっとお世話になっているわいとんさんの発表を聞きました。
*スライド&振り返りブログはこちら。
YAPC::tokyo 2019で登壇しました – Wyton
内容的にはぼくには全然難しいんだけど、とにかくデモの進行上想定外のことが起きても、そのつどそれに備えて用意していた第2案、第3案を次々と出してリカバーしていくのが本当、すごいなあ・・と思いました。
それらの準備されていた代案、もちろん使わずに済めばそれに越したことはないわけですが、でも使わざるをえない状況になったことで「ひえ〜、そんなところまで用意してたんだ」と知れるわけで、その意味ではわいとんさんの思考の深さを窺える発表だったのではないかと思います。
tecklさん
シーサー社のtecklさん。最初に知り合ったのはYAPC::Okinawaでぼくの少し前に同じ会場で発表されていたときで、その半年ぐらい後、buildersconの懇親会でゆっくりお話しできて、そのときにはPerlの初級〜中級あたりのあれこれについてお聞きしました。
tecklさんはベテランの貫禄というか、終始ゆったり柔らかい調子で話が進んでいって、リラックスして聞きました。内容的にも俯瞰的な広い見方から年代ごとの細かい差分までいろいろな情報が組み込まれていて、面白かったです。
Songmuさん
LTの時間が迫ってきたので、最後の20分はホールで・・と思ったらSongmuさんの発表でナイス!でした。
*上記のhitodeさんもそうでしたが、今回は全然事前にタイムテーブルを確認してなくて、毎回「次はどうしようかな」と行き当たりばったりに部屋に入っては登壇者を知る感じでした。
いろんなトピックや描写がありましたが、やはり印象に残ったのは失敗経験のところでした。
ぼく自身は、アウトプットすることは必ずしも良いことばかりではなくて、むしろそれは失敗する可能性をゼロから1以上にする、という後戻り不能なスイッチを入れてしまうことだから、いかにそれが良い結果をもたらす可能性が高かったとしても、それを「絶対やるべき」とか「どんどんアウトプットしろ」みたいなことを、少なくとも他人の立場から無責任に言うのは違うかなと思っています。
その失敗によって損害をこうむるのは行為者自身であって、勧めた人は1ミリも影響を受けないわけなので、たとえば上司や同僚のように同じリスクを背負う立場で言うならアリかもしれませんが、結局アウトプットとはそういう失敗と不可分なものとして存在していて、だからこそ紛れもない価値があるのだよな・・なんていうことを、その話を聞きながら考えていました。
他にもいろいろと知っているようで知らないことが語られていて、楽しかったです。ベストトークはSongmuさんに入れました。
広木大地さん
ゲストスピーカーの広木さんの発表も聞きました。場馴れしてらっしゃるのか、すごく聞きやすい話で、スライドも要領を得た見やすい構成でした。
事前に著書の『エンジニアリング組織論への招待』を少し読んでいましたが、まだ全部は読み切れていなくて、でも内容的には重なるところが多いようだったので、相互補完的に聞けたかなと思っています。
予習のようにポッドキャストのEMFMも聞いていましたが、せっかくならやっぱりもう少し本を読み込んでからの方がより面白く聞けたかなとも思っています。
とりあえず、続きを読んでからまたスライドを見直してみたいと思います。
yoku0825さん
一瞬、懇親会に飛びますが、今回発表もされた@yoku0825さんとも少しお話ができて嬉しかったです。
yokuさんはぼくがエンジニアのコミュニティに飛び込み始めた超最初の方、Chiba.pmに参加したときに初めてお会いして、その意味ではPerl入学式のサポーター陣に次ぐ長いお付き合いです。
今でも覚えているのは、ぼくがChiba.pmで自己紹介的なLT(Perlを勉強してます、的な)をした後に、yokuさんから「データベースに関心はありますか?」という質問があって、それは場が湧いたのでぼくも嬉しかったんだけど、でもデータベースの勉強なんてまだまだ先の話で、そもそもプログラミング自体いつまで続けられるかわからないよな・・と思って「関心はあるけどまだ先の話」なんて生真面目な回答をした記憶があります。
気がつけばそれから5〜6年経って、ぼくはまだプログラミングをしていて、続けているどころかYAPCに登壇したり、むしろ勢いは増しているようで、データベース、現時点では直接的な必要性はないにせよ、近いうちに勉強できるんじゃないかなという予感もあったので、そういう話をしたりしました。
LT狂騒曲
本編のトークがすべて終わって、tokuhiromさんのキーノートの前にLTが行われました。
LTの参加に至る流れや詳しい発表内容については、別記事にまとめていますので、ぜひどうぞ。
そちらの記事に書きそびれたこととしては、採択が決まった後、ネタ自体はだいたい揃っていたのですが、どうしてもオチまでの流れが決まらなくて、結局当日の朝になっても固まらなかったので、通常ならちょっとあり得ないことですが、YAPC本編が始まった後も前夜に泊まっていた浅草橋の宿でそのままずっとスライドを作っていました。
今までも寝坊して午前のトークを聞きそびれるとかはあったのですが、自分のスライドを作るためにオープニングをスルーしたのは初めてでした。
ただ、tokuhiromさんのキーノートの中で「日本人はトークを真面目に見過ぎ。せっかくいろんな人が集まってるんだから、Hallway Trackみたいな感じで適度にパスしたらいい」みたいな話もありましたし、その意味では日本人参加者としては理想的な態度だったのでは、とも・・(ちがうか)
なんとか内容がまとまって、最後に1回通しで練習しました。おそらく通しの練習ができたのはその前も含めて計4回ぐらいだったと思いますが、結局一度も5分には収まらなくて、かえって不安が高まりました。
Songmuさんのトークが終わりに近づいて、そろそろLTか・・と緊張がみなぎってきた頃、発表前にスライドをアップしておくか(&Twitterにもハッシュタグ付きで知らせておくか)、ちょっと迷いました。
事前に公開しておけば、後ろの方でスクリーンをちゃんと見れない人もついてきやすいかな、と思ったので。
でも実際には、会場後方にもモニターが用意されていて、これがあれば大丈夫かなと思ったのと、「このスライドは今この会場に集まっている人たちに優先で見てほしいな」と思ったので、事前の公開はやめました。
ようは、会場にいる人たち、自分と同じ時間・同じ場所を共有している限られた人たちを、えこひいきしようと思ったわけです。
真っ白な夢の中を爆走するように発表し終えて、あらためてその仕上がりを今の頭で振り返ってみると、上記の解題にも書いたとおり、実感的には理想の3割ぐらいの出来でした。その意味では、失敗です。
でも、やらなかった場合に比べたら30倍ぐらいやって良かったと思います。その意味では成功でした。
終わりに
ということで、時系列も内容もめちゃくちゃな感じですが、当日の感想を記してみました。
たった1日の本編ではありましたが、YAPC::Japanシリーズに通底するローカルな手作り感と、伝統ある雰囲気が魅力的にマッチした、良いイベントでした。
最後の id:kfly8 さんによるクロージングもよかったですね。一旦引き受けて、でもやめて、でもまた別の形で借りは返した、みたいな。
ついでの話ですが、ぼく自身も20代半ばから後半ぐらいだったか、自分で自分に呪いをかけて、でもその呪いを自分で解いて、みたいなことがありました。当時のぼくはそれを一生やっつけられないだろうとほとんど諦めていましたが、あるとき村上春樹さんの「七番目の男」という短編(『レキシントンの幽霊』所収)を読んで、「やっぱりこれは自分で落とし前をつけなきゃ駄目なんだ」と思ってなんとかやっつけて、自分を解放できました(スピリチュアルっぽく言いましたが、泥臭いプライベートな話です)。
イベント全体をふと思い返すと、会場でtokuhiromさん、Yappoさん、xaicronさん、弾さんといったオールスターをひと目に見られたのも何だかハッピーな感じでした。
tokuhiromさんの写真の中で、東工大でしたか、芝生でnipotanさんやkazuhoさんも含めてにこやかに語らっているシーンが写って、うわーレジェンドな光景だな〜と勝手に思っていましたが、でも同時に、当時のその人たちからしてみれば、べつに特別なことをしていたわけではなくて、ただその時そこにある面白いものとか、気になることとかを次から次へ全力でやっていただけなんだろうな、とも思いました。言い換えると、周りから特別だと思われるような(レジェンド感のある)ことをしなくても、いま目の前にある超面白そうなものとか、大事だと思えることに本気で取り組むっていうのがやるべきことで、もしそれが一部でも達成できたら、のちのちその瞬間を偶然切り取った写真とかを見た誰かが「これ、伝説的な瞬間だね」って言うみたいな、そういうことなんじゃないかなと。今の自分がtokuhiromさんたちみたいになろうとする必要は全然なくて、自分自身が今やりたいことにちゃんと向かっていけば、それが結果的に未来から見た「スゴイ」になるんじゃないかな、と。そんなことを感じたイベントでもありました。
YAPC::Japan、おそらくこんなにアクセスしやすい会場での開催はそうそうない気もしますが(笑)また参加できることを楽しみにしています。