GitHub Kaigi の感想
前回の記事の冒頭でも少し触れましたが、
http://note103.hateblo.jp/entry/2014/06/02/014318
先日の日曜日、6/1には渋谷のサイバーエージェントさんで開催されたGitHub Kaigiに行ってきました。
GitHub Kaigi
当日の模様は技評Webで素晴らしいレポートが公開されています。
GitHubが僕たちを,仕事の現場を変えた!──「GitHub Kaigi」レポート:レポート|gihyo.jp … 技術評論社
ちなみにこの記事に対する @inao さんの評。
https://twitter.com/inao/status/474092179917254656
とくに緩急なくザラッと感想を記します。
1. @hirocaster さん
主眼は「使っているだけの人から活用する人へ」ということかなと。そこから繋げる形で著書の話にも入っているけどそれは皮肉ではまったくなく良い宣伝になっていて、なるほど、そういうことを書いているなら読んでみたいな、と思わせる話だった。
というかぼくはすでに買って持っていっていたぐらいなので、じゃあ買おう、みたいにはならないけど、普通の人が皆知っていることの「もう一歩先」には何があるのか、ということを示そうとしていたのだと感じる。
ただただしさんの日記で、
http://sho.tdiary.net/20140601.html#p01
他のプレゼンでもちょくちょく感じたけど、その変革がGitHubによってもたらされたのか、そうでないのかがちゃんと分析できてない話が少なくなかった
と書かれていたが、僕もそれは(言われてみればという感じで)感じたことだった。というのは、ある意味ではイベントが始まる前から思っていたことでもあって、そもそもGitHubについて人は何を語れるのだろう? という疑問というか不思議というか謎があり、「それはGitHubでなければ言えないことなのか?」というのが元々わかりづらい題材だったろう、とも思う。
GitHubは何かを作る「道具」であって、作られた「何か」の方ではないから、たとえば筆で絵を描いたときに、絵の方を発表する場であればわかりやすいが、その「筆」がいかに軽くて使用されている馬の毛が繊細で〜・・なんて言っても楽しめる人がいるかは微妙である。(いるには違いないだろうが)
元々直也さんはもっとコンパクトなイベントでサクッとやるつもりだった的なことを言っていたので、そういう場なら成立したかもしれないけどさすがに500人となると(プラス補欠400人超えとか)その辺の見極めは難しいものかもしれない。
@hirocaster さんの本はまさに道具の使い方に関するもので、買う人はみなそれを知りたい目的で買うからミスマッチは少ないだろうけど、プレゼンとなるとあまりに参加者の背景がバラバラだから当たり外れはありそう。
とはいえ、イベントの頭なので柔らかめに入る、ということ自体は正しかったとも思う。
2. @shibayu36 さん
素晴らしいプレゼン。良かったのは、
- 初めはどう使っていたか(GitHubを)
- 問題発生。その理由
- 対策とその結果
というパターンを作って、3つの例についてすべてそのパターンで説明していたこと。
非常にわかりやすい。ポップミュージックでAメロ、Bメロ、サビ、というパターンを繰り返して聴いているような心地よさというか安心感というか集中できる感じがあった。
内容としてもけっこう泥臭いというか、「1」の最初の状況っていうのはパッと聞くとスマートでエンジニアチックでいいじゃんーという感じなんだけど、実行してみると地味に痛痒い不備があって、さあどうしようか・・となったらけっこう人力で手作業な感じの対策を、ある意味対症療法的に施して乗り切ってみるとか。
スマート指向の理念と、営利企業としての「結果を出す」という義務を両立させている(させようとしている)その感じがいいなと思った。
チーム作業における情報共有や進捗管理などはぼくの仕事(本の編集)でもけっこう死活問題なので、「あるある」とか「俺ならどうするかな・・」とか「それは正しいかも」とかいろいろ身に引きつけて聞いてしまった。
ちなみにホワイトボードを使ったカンバン、以前に直也さんが致命的なリスクとして、ポストイットが剥がれて誰も気づかなかったら大変、みたいな話をしていたけど、そういうのどうしているのだろう? とは思った。
あと、つかみでご自身のIDがマチマチなことに対して「アイデンティティが確立されてない」みたいにゆってたのがウケた。けっこうそこでほぐれた。
3. @amatsuda さん
こちらもとても良いプレゼンだった。個人的には松田さん1番、shibayuさん2番、というぐらい好きな感じだった。
カンファレンス的にはスピリチュアル枠か、というぐらいエモい要素もあるにはあったけど、そういう意味にかぎらず全体を通して面白かった。
ポイント的には「とにかく丁寧&たくさんドキュメントやWikiを書いた」「コミュニティに積極的に参加した」あたりだろうか。
GitHubの良さ、楽しさはそれを「使っていないとき」、外で本人たちと会って話すときとかだ、みたいのとか、だからプロフィール写真は自顔の方が(アニメアイコンとかより)いい、みたいのとかも面白かった。
ちなみにだから、俺、自顔だからよかったーとか一瞬思ったけど、でもよく考えたら今使ってるやつってもう6年ぐらい前のやつでダメかも、と後から思った。
あと松田さんはたんに見た目がフォトジェニックというか、Tシャツ姿や髪型がカッコいいなあ、と思った。自分は中央に近い前から2列目に座っていたから、登壇者の立ち振舞が間近に見れてそれもなんというか、頑張って行った甲斐があった。
kaminariという名前、以前からカッコイイ、なんのツールか知らないけど、という感じだったけどキラキラネーム&発音しづらい(海外の人が)というのを聞いて、うわ自分もキラキラネーム指向かもな・・とちょっと思った。(kaminariはそれになる経緯というか根拠があったようだけど)
あとWeb+DBプレスの50号が神回とは初めて知った。自分はムックの方、とくにGitHub関連を(それこそ@hirocasterさんの記事)だいぶ読んでいたけどDVDのバックナンバーも読み返してみようと思った。
4. @cobyism さん
from GitHub. 日本語入りのスライドだったこともあってか、英語プレゼンだったけど「ん? ナニ?」みたいなことがあんまりなくて、面白く聞いた。
リモートワークとかキャンプファイアー使ったチャットコミュニケーションのこととか、あとHubotの話もあったっけ。
直也さんからの紹介ではちょっと肩の力を抜いて休みながら聞く時間&内容、みたいな話だった気がするけどけっこうガッツリ楽しんだ印象。
あとやっぱり、なんかお国柄なのか何なのか、スライドの雰囲気が違うな〜とか。(いい意味で)
5. @inao さん
休憩を挟んで編集者の稲尾さん。
この頃からみんな疲れてくるはず、みたいに見込んだのか、稲尾さんの担当時間は他の方よりちょっと短かったですよね。
んで、それは良い方向に働いたかなという印象で、コンパクトに焦点の絞られた話が展開されて面白かったです。
ちなみにこの少し後に、この発表を起点とした稲尾さんと武藤健志さんと角征典さんによるITな編集にまつわる大変充実したやり取りがTwitterで交わされていて、うわーすげえ濃い話をしてるなあ、これまとまったらあとで精読しよう〜とか思っていたんだけどとくにそういう流れもなさそうだったのでまとめておきました。
GitHub Kaigi から生まれる組版の自動化や編集やそういった話 #githubkaigi - Togetter
先日のRe:VIEWカンファレンスにも行って、テクノロジー指向の編集者(でもないけどそういう仕事に従事してる人)としては気になるところでもあるので今後も稲尾さんや武藤さん方々の動向には目を配っていきたいと思っています。
※といっても僕の編集の仕方はかなり何というか特殊というかあまりフィードバックが活かされるたぐいのものでもない気はしているけど・・その辺も含めて公開していけばいいのかもしれないけれど。
※そういえばRe:VIEWカンファレンスの感想書いてなかった・・!
6. @nathansobo さん
from GitHub. Atom エディタの開発者であるNathanさんの発表。こちらは当初は日本語入りのスライドではなかったらしいのだけど、発表の少し前に日本語字幕入りのPDFが配布されてその辺の段取りが大変素晴らしかった。
発表も面白くて、英語はCobyさんに比べるとけっこう聞き落としてしまう部分も多かったけど(疲れ始めていたのかもしれない)、やっぱり目の前で身振り手振りで説明してくれているのと、前述の日本語入り資料のおかげだいぶ楽しめた。
自分自身はVimの挙動が今使っている環境と同程度に再現されないと、どんなエディタであれもう無理、使えない、と思っているので、その辺がクリアできないと実際に使うことはないかもしれないけど、興味はすごく持ったしぜひ充実したVim動作をプラグインとかで出来るようになってほしい、とか思った。
そういえば終始、Nathanさんが「アダム」と言っていたけどそれが「Atom」のことで、英語圏の人に伝えたいときにはそう発音しなければな、と思った。
ちなみに最近、Appleが出したプログラミング言語で「Swift」、少し前にFacebookが「Hack」、その前にGoogleが「Go」というのを出していて、それに似た流れで「Atomって・・RSSの?」みたいな、ようはもう名前がカブるとかそういうことを気にしないフェーズにエンジニア業界は入っているようで、まあたしかに、TwitterのID問題(N事件)とかにも見られるように今後取得できる名前なんて基本減る一方なので、もう「これまでに使われてない名前は・・」とか気にするよりは「自分が付けたい名前を付けりゃいい。カブっててもそれは別問題として対応する」という方がまあ正しいのかな、とは思うしそういうことまで(まったく本題ではないが)思ったりした。
7. @yuku-t さん
from インクリメンツ。GitHubというよりGit自体に関する課外講座みたいな感じで、とても意識が高まった。
自分はGitって、非エンジニアとしてはけっこう使ってる方だと思うけど、それでもやっぱり最低限の「いつも使うやつ」しか使っていなくて、ああ普通のエンジニアはこのぐらいまでは普段活用していて、その上で、ここで発表されているようなことまではあまり知られてないのだなあ、とかそういう使用され具合の空気感というか、そういうのが感じられた気がして面白かった。
目の前でライブコーディング的にあれこれやってくれていて、「これってこういう意味だよな・・ああ、そうっぽい」とか、「いや全然わからんな」とか思いながら見た。
stashとかsquashとか、聞くのは聞くけど自分のフローにはほとんど出てこなかったのでちゃんと基礎から見なおした方がいい、その方がトクしそう、と思った。
8. @miyagawa さん @naoya さん
本編最後は @miyagawaさんのポッドキャスト Rebuild の公開生放送。
ラジオの公開生放送といったら毒蝮三太夫的なAMノリしか想像できないけど(あるいは永六輔の番組のレポーターしているラッキィ池田とか)、ある意味そんな感じで(かどうか)周囲の反応コミでの新鮮な内容だったと感じる。
@miyagawa さんも @naoya さんもけっこう普段どおりのトーンというかノリというか、とくに人前だからどう変わる、とかもなくて、あまりに自然なので聴いてるこっちまで「いつもこんな風に聴いてる」みたいな素の感じで入り込んで聴いてしまった。
事前にタイムテーブルを確認したら45分ぐらい用意されてて、最後にそれはちょっと長く感じるかな、と思ったけど全然そんなこともなくて(ようは「もう喋ることないですね・・時間持て余す・・」みたいなこともなく)、サラッと始まってサラッと終わる、みたいなトーンがまたRebuildそのものという感じで楽しんだ。
内容はGitHubとかリモートワークとか、そういうイベントのテーマに関わることを中心に、各発表の間を埋めるような要素もありつつ、でもなんか基本楽屋話的な感じというか、タバコ部屋で息抜きに雑談してるような感じでもあって、得るところもありつつ聞き流す(というか聞いてもわからない)ところもある感じでそこもいつも通りだったのかなと。
まあ、いつも通りでない場所でいつも通りというのは異常なことだけど。
そういえば、後でまた別にブログ書くけど最近GitHubにアップした自分用ツールのREADME.mdに、このときに @miyagawa さんが紹介していた動画キャプチャツール「LICEcap」をさっそく使った。
- README.md
https://github.com/note103/Carvo/blob/master/README.md
- LICEcap
http://www.cockos.com/licecap/
その場ではずっと、MacBook Airを開いてエディタにメモを取っていたんだけど、「ライスキャップ」と聞いてそのままブラウザで検索して「これかな」というのをURLだけチェックして置いておいたのを一昨日ぐらいにそのREADME書くときに「そういえば」と思ってそのままDL&使用してみた、という。
このサクッとサラッと使いながら流れていく感じが楽しい。
LTについては割愛。でも皆さん話の途中でもキッチリ5分でサクサク終わらせていったのは硬派で素晴らしかった。
あとnanapiのデザイナーさんの発表、「大したコマンドとか使ってないんだけど黒い画面がGitの文字で埋まるとなんかカッコイイっていうか充実した気になる」という話が共感の嵐。
前に以下でも書いたけど、
プログラミング初心者に助言するときに考えるべきことは何か - the code to rock
非エンジニアはべつにプログラミングとかに興味がないとか生理的に受け付けないとかなわけじゃなくて、「黒い画面が文字で埋まってなんか盛り上がる」みたいな人もいる、ということはやっぱり大事だと思う。(誰に言ってるのかはわからないが)
最後の直也さんのシメ。「効率的な作業は以前にもブームになったことがあって実際自分も試したけど環境が整っていなくて挫折した。それが今は周辺のテクノロジーが進歩したり、その中でGitHubみたいのも生まれて、そういうツールの進化のおかげでようやくそれができるようになってきた」みたいな話。冒頭で書いた「それ、良い方法だと思うけど、でもGitHubの功績なのかどうなのか」みたいな疑問に対する答えとしては的を射ていると思う。なぜこんなイベントを企画したり、実行したりしたのか、という解にはなっているというか。
あと、全体の構成もよかった。最初に入門者編的な @hirocaster さんの話から始まって、休憩を挟んで稲尾さんの短め&新鮮な話題を突っ込んで、最後のみんな疲れてるであろうところは対談形式のRebuildで終わる(で、その後に5分できっちり終わるLT)(ついでに言うとLTの最初が永和システムマネジメントの人で最後がpplogの中の人だったのも良い構成だった。pplogの中の人が出てきて「あの人がpplogの人か、初めて見た」みたいなリアクションがTwitterとかで盛り上がってるのを見て、なんかほんとにこういうカンファレンスってロックフェスみたいになってきてるな〜とか思わされた)、というのはたぶん計算の上だったろうけど、実際にどんどん乗せられていく感じで飽きずに進んでいって、最初は6時間長すぎ!とか思っていたけど少なくとも長いとはまったく感じなかった。
これだけ充実した時間を無料で過ごせたので、せめて今無償で使っているGitHub、課金で使おうかなと思っています。
関係各位、ありがとうございました。