私のYAPC::Asia TOKYO 2015(1) 〜前夜祭&1日目〜

今年で3回目の参加となるYAPC::Asia。yapcasia.org

前夜祭から3日間のフル参加。むちゃ忙しい時期だったけど無理して行った。なぜか?・・いや、わからない。でもたぶんそこにしかない何かを体験しに・・みたいなことだったのだとは思う。

前夜祭

実質初日の前夜祭、18時スタートだと思って会場に向かったけど安定の遅刻ペースで、しかし実際には18時は「開場」時間であって「開始」時間ではなかったようで、着いた頃にはもう行列などもなくスムーズに入れて、かつまだスタートもしていなくてちょうどいい感じだった。

最初は柴田さん(@hsbt)のRubyの話。もう一つのウズラさんのトークは会場が早い内から結構埋まっていたので、ゆったり聴ける方がいいなあ、と思ってそちらに行ったのだけど、結局その部屋も普通に埋まって前夜祭から盛況だなあ、という感じだった。

柴田さんはもちろんRuby界隈では有名な方で、日頃スター・プログラマーを追っていれば普通に観測範囲に入ってくるのでTwitterその他、勝手に知っていたけど(そういえば最近だと『スクラム実践入門』も読んでいた)、近くで見るのは初めて。流れる空気感とザラッとしたドライさを併せ持つ90s後半のブリットポップのような人だった。

次に見たのはPerlワンライナー講座で、ぼくはこの日、ホテルに荷物を預けて身軽スタイルで来ていたので(個人スポンサー用のノベルティを受け取ることを見込んで)Macもホテルに置いてきて、そのせいでハンズオン・スタイルのこの発表をただ見ているだけ、みたいになってしまった。資料が公開されているので追って復習してみたいが、とりあえず「-E」や「-M」の意味がちょっとわかったと思う。

ワンライナーPerlの基礎さえある程度踏まえていればけっして難しいものではないと思うのだけど、なかなかそれに特化した講座などもないから今ひとつよくわかっていなかったけど、貴重な入り口になったと感じる。

そして @tagomoris さんによるOSS関連のお話。すごい良かった。きっと多くの人が言うだろうけど本編に入っていても全く遜色ないクオリティ、密度、パフォーマンスの圧倒さ具合。夢中になって最後まで聞いた。海外での発表もされているらしいのでそのぶん経験値が高いのか、ようは基準としているレベルが高いのだろうなと感じた。
実のところ、翌日の本編1日目が終わってベストトーク賞へ投票するにあたり、このトークに投票できないものかとしばらく探してしまったが、やはり候補の中にはないのだった。
自分も毎日そこそこ頑張っていると自負していたけど、まだまだ甘い、満足せずに走り続けないと人生もったいないな、と思わされた。

会場を出るとPerl入学式のメンバーがそろっていて、このまま大井町で飲もう、ということだったのでついていった。すでに会場で3本缶ビールを飲んでいて、普段たしなむアルコール量と同じぐらい摂取済みだったけど、お祭り気分に飲まれて、楽しく話して夜中にだいぶ頭が痛くなった。

DAY 1

YAPC::Asia TOKYO 2015。実質2日目であるところの第1日目。

前夜のプチ懇親会&その前の缶ビール3本の猛威が朝まで残っていたらイヤだな・・とけっこう心配していたのだけど、幸い目が覚める頃にはほぼ解消していた。よかった。

しかしそのままボンヤリ身支度していたら、あれ、もしかしてラリー・ウォール氏の開会トークにこのままだと間に合わないかも? という時間に。

ホテルのある大井町駅から国際展示場駅まで、そして国際展示場駅から国際展示場までって何気にけっこう距離があって、つい「すでに大井町にいるのだから〜」と安心していたけど甘かった。しかしそんな風に焦りながらも、何を着ていくかなかなか決まらない。

というか、普段はそもそも迷うほどの候補自体ないので、一番手近にあるTシャツORポロシャツを雑に着て外出するだけなのだけど、その時はそのいつもの紺のポロシャツにするか、それとも何となく持ってきたヨレヨレのレディオヘッドのロックTシャツ(2001年の来日公演で買った)のどちらにするかでしばらく逡巡・・。というのも僕にとってYAPC::Asiaはほとんどフジロック・フェスティバルに行くような、自由を味わいに行くようなものだから、保守的に無難に臨むよりもう少しスキのある感じの方がいろいろラクなのでは、という気持ちがあり、しかし10年以上好んで着ているヨレたTシャツを自分の専門分野というわけでもないある意味アウェイのカンファレンスに着ていくには勇気が必要・・とかそういう迷い。で、結局しかしレディオヘッドを着ていった。

会場へ着いたら10:02。ラリーさんの話はまだ始まったばかりのようで、前方に空いている席を見つけて着席。通訳レシーバーをゲットしそびれたことに後から気づいたけど、まあ、べつにいいや、と思ってそのまま最後まで聞いた。
ホビットロード・オブ・ザ・リングと、Perl5 & 6を重ねあわせながらのトークで、まったくそうした物語にいざなわれるような、ファンタジックでマジカルなトークだった。

同人誌 Get! & CoreOS

会場を出ると同人誌頒布所が設置されていて、『雅なPerl入門 第3版』と『Acme大全2015』を早々にゲット。雅なPerlは新版にあたりPerl6入門というコンテンツが追加されている、という話だったから楽しみにしていた。
著者の平松さんは「ちょっと足しただけ」みたいに言っていたけど、Perl6のインストール方法から基本的な文法について丁寧に解説されていて、導入&チュートリアルとして十分な内容だと思った。(本格的にはこれから読みます)

その辺を一周ふらふらして、またメインホールであるところのトラックAへ戻り、Kelsey Hightowerさんの「Managing Containers at Scale with CoreOS and Kubernetes」。

今回はなるべく英語スピーカーのトークを聴きたいと思っていたのと、Dockerには以前から興味があるのでCoreOSの世界にもちょっと触れたいなと思って。トークの内容は圧倒的に意味わからなかったけど、その世界観(の片鱗)には触れられたと思う。

午後

昼食タイム、無料のお弁当をゲットしそびれて無限(無料)コーヒーで気を紛らわした(おいしかった)。息をついて@kazuhoさんの「HTTP/2時代のウェブサイト設計」へ。

このトークは盛況になるはずだから、と思ってけっこう早めに入室&着席したが、期待を上回る面白さ。ということで、この日のベストトークの1票をこちらに投じた。

@miyagawaさんのRebuildを聴いていても思うけど、本当に対象を深く理解している人というのは、それを他人に説明するとき、すごく簡単なことのように説明できる。だから(というか)この発表内容を多くを僕は知らないはずなのに、混乱とか、ストレスとか、そういうものを全く感じず、むしろ「よくわかった!」という爽快な気分にすらなった。

見方を変えると、説明が下手な人というのはたぶん結局、自分でも理解できていない部分を誤魔化して説明するからわかりづらい話になるのだろう。それはつまり、本来その対象を理解するために必須の情報が抜けているということで、大雨の中で数十メートル向こうから何かを叫んでるとか、電話が混線して声が途切れ途切れにしか聞こえないとか、そういう感じに近いのだと想像する。

その点、@kazuhoさんの話は本人が理解していることを理解しているとおりに一切の誤魔化しなく普通に話しているだけだから、すぐ耳元まで(比喩的な意味で)クリアに誤解なく聞こえてくる。HTTP2、なるほど。という感じだった。

Conway's Law of Distributed Work

再びトラックA。Casey Westさんの「Conway's Law of Distributed Work」。正直なんの話が始まるのか、サマリーも全然読んでおらずとりあえず「英語だから」&「会場が広いので落ち着いて聴けるだろうから」というだけの理由で行ってみたのだけど、ヒットだった。招待スピーカーでなければこちらも投票したかったぐらい。

テーマはチーム開発におけるコミュニケーション方法&ツールの紹介、みたいなものと言っていいだろうか。というか、リモートワーク大作戦、みたいな感じか・・?(雑ですみません)

僕自身も基本リモートワークで仕事をしているので、単に興味とか趣味とかいうだけではなく、切実なテーマとしていろいろ参考になった。
コンウェイの法則、初めて聞いたけど面白いと思った。

この辺りから「今回の同時通訳、前回以上にスゴくないか?」という畏敬の念が生まれ始める。

15:30

迷わず@moznionさんの「Yet Another Perl Cooking」に向かったけどひと目で無理とわかる長蛇の列が比較的小さめの部屋から伸びていたので即諦め。またトラックAに戻るのもなあ〜というのもあり、その少し後にこれも絶対聴きたい!と思っていた@tokuhiromさんの発表があったので、その会場で徹夜組的に前の発表から聴いていよう、と方針転換。

これがヒットで、「その前の発表」であるところのHideaki Nagamineさんの「PietでLISP処理系を書くのは難しい」、堪能した。from 京大マイコンクラブだそうで、KMCというその名前を聴いたことはあるけど、まったく末恐ろしいアンファン・テリブル、という感じだった。高速に頭の回る若者・・自分と別次元で理解できない、という意味ではなく、ただ否定しようのない文化の違い、それは世代の違いとも環境の違いとも言い切れない、ただ文化や習慣が違う、国や民族が違うように、としか言いようがない明らかな違いがありながら、しかしそれでも我々の間には共通するかもしれない物事の面白がり方というか、そういうことはあるかもしれないなあ、などと未知のPietについて聴きながらつらつら感じたりした。

まあ、自分も元々は美大の油絵科出身なので「絵でプログラミング」というのは多少親近性がある・・とかそういうこともあったのかもしれないけれど。

Perl6 on JVM

そして@tokuhiromさんの「Perl6 on JVM: It works??」。もう2年近く前だろうか、Rebuildでtokuhiromさんがゲストの回でPerl6やそれにまつわるVMの話を楽しく聴いていたので&今回のPerl6ブームもあって、これはぜひ聴いておきたいと思っていた。

スライドも公開されていたけど、Perl6のインストール方法も含めて僕にすら伝わる内容で面白かった。前述の@kazuhoさんや@tagomorisさんと同様、やはりちゃんと理解していることについてストレートに話しているので聴いていて「?」というところがない。というか、わからない箇所が出てきても明らかに「これは俺には手に負えない話」ということが明確にわかるので引っかからないのだろう。

僕はといえば、すでにこの時までに各トークの合間に『雅なPerl入門 第3版』を読みながらPerl6をインストール済みだったのだけど、この発表の途中で

$ perl6-m

というコマンドをtokuhiromさんが打って、そのまま対話型のモード(REPL)に入ったのを見て、「え、あんなこと出来るのか」と思ってそのまま手元で試したらホントに出来たので感動した。
そんな小さなことからいろいろ勉強になったし、楽しかった。この日の2票目をこちらに投じた。

LT

初日のLT。とくに印象が強かったものだけチラッと書くと、@DQNEOさん。個人的には応募されていた以下、聴きたかった〜。

ぼくはちょうど今簿記2級の勉強中でまさにこの辺、興味ど真ん中だったので。いつかまた機会があればぜひ・・

それからPerl入学式校長のpapixさん、仕込み以外の通知がサクッと飛んできたりして、この方ほんとに笑いの神が宿ってるなあ、という良いプレゼンでした。オーディエンスも安心して見てられる、という感じがありましたね。

cpm、試してみたい。

likkさん、Perlの知見をよくブログで書かれていて、拝読しています。アカウント名でしか知らないような人を直接見れるのもカンファレンスのいいところですね。

@hirataraさん、面白かった。Audrey Tangさんの名前は以前にやや伝説的な感じで聞いたことがあったけど、そんな聞きかじりの知識が現実と接続したようで(それもPerl6の話題で)、おお、となった。
プラスMacの通知が右上に出てくるの、初めはハプニング的なものだったのが徐々にYappoさんたちのハック空間としてエスカレートしていったのがさすがエンジニアの祭典だな、という感じで素直に感心した。

iPhone落とした

LTが終わって、満席の会場から人が出るまでにだいぶ時間がかかりそうだったので、そのまま席に残って「雅なPerl」を開きながらPerl6の練習。とりあえずラリーさんが「p」と押したらREPLが始まるようにエイリアスを設定してるようだったので、それを自分の.bashrcにも仕込もう・・とかそういう。

なんてことをしている間に知り合いが少しずつ集まってきて、僕もpapixさんにLTの感想を伝えたりしながら「じゃ、そろそろ懇親会へ!」という流れになったので会場を出て、エスカレーターに乗って下界へ・・というところでふと、あれ、なんかいつもiPhoneを入れているズボンの左ポケットのあたりがなんか軽い・・ん? と思ったらiPhoneがない。

あ、そういえばなんかさっき、Perl6の練習しながら歓談しているときにかすかにゴト、って音がしたような。あれか! と思って速攻会場に戻って、座っていたあたりを見回すけど、わからない。というかそもそも会場が広すぎて自分がさっき座っていた場所もわからない・・。うはー、まさか自分がこんな状況にリアルで陥るとは〜大変だぞこれ・・と思いつつ、もしかしたらすでに届けられている可能性もあるか? と思って、すぐ近くにいたスタッフのすぎゃーんさんに聞いてみたけど、まだiPhone5の届けはないという。ウッ・・となりながら詳細事情を共有しながら地味に捜索・・していたらウズラさんも不穏な空気を感知したのかサラッと捜索に参加してくださり、「じゃあ電話かけてみたら? ほら」とご自身の電話を貸してくれたり、同時に「iPhoneを探す機能設定してるなら鳴らしてみよう!」といった案を次々挙げてくれたりして、それらを一つ一つトライしている間に別のスタッフの方が「あれでは?」と、うわーよくそんなのわかりましたね!!みたいな、砂丘に落とした数の子のごとく地面の影に溶け込んだそれを発見してくれて、ウズラさんがサッと拾い上げてくれて一件落着。・・というか、本当にすみませんすみません! その日着ていたズボンはポケットがけっこう浅いやつで、以前にも一度細野晴臣さんのライヴを見に行った時に同じポケットからiPod touchを落としたことがあったので実は今回で2度めだった。以前のそれが何年も前だったからつい油断していたけど、とりあえずこの瞬間からiPhoneはボタン付きの別のポケットに入れるようにしました!

懇親会

という流れでようやく懇親会会場。もうワイワイ盛況で、誰がどこにいるのかもわからず。たぶんすでに開会から20〜30分ぐらいは経過していた模様。すでにビール瓶はカラのものが多くて、ビール目当てで動くの大変そうだったのでとりあえずワイン。

なんだかんだで知り合いには所々で会うことができて、つらつら歓談。Chiba.pm同人&前回のYAPCから1年ぶりの@yoku0825さんにお会いしたり、Perl入学式 in大阪でサポーターとして活躍中のアマチュアプログラマー仲間でもある@tomcha_さん、そしてYAPCスタッフ&Perl入学式 in東京サポーターまっすーさんたちと話せたのはやっぱり、この場じゃないと実現しない感じだったので良かった。

それからこの時、僕のブログを読んでくれたという人が声をかけてきてくれて、僕そんなに目立つアイコンでもないと思うのだけどよく気づいてくださった! という感じですごく嬉しかった。
以下のあたり記事を読んでくれたとのことで、(たしか)

それがきっかけで云々かんぬん、っていろいろ話を聞けてよかった。
そういえば去年のYAPCの懇親会でも僕のブログを読んでる、って声をかけてくれた人がいて、彼はその後Perl入学式のサポーターになって、さらにはPerlを使う会社で働くことになったという。ほんまかいな。
ブログ、書いててよかった。今後も書こう。

話を戻してこの時の写真、まっすーさんが気を利かせてくれて皆で撮った。以下のまっすーさんのブログの下方写真集、ラリーさんの下の写真で一番左に写ってるレディオヘッド着てるのが私です。trapple.hateblo.jp

会場についた頃は一瞬フードも売り切れている感じだったのだけど、ありがたいことにどんどん補充されて、食べ物にはありつけない覚悟をしていたのだけど(遅刻した時点で)実際には充分と言えるぐらい堪能しました。というかほんと、あれもこれも美味しかった。

ケータリングについて思ったこと。前回まで以上に料理もフロアスタッフさんのサービスも良かった。こういう場のスタッフさんって案外、客をモノ扱いしがちというか、たしかに客には酔っぱらいも多いし、いちいち親身に対応していたら大変なのかもしれないけれど、それでもそんなにドライに対応せんでも・・というか仕事、嫌いなの? と思わず聞きたくなるような人もいるのだけど、今回はそういう違和感をほとんど感じなかった。

しばらく過ごして、料理も充分食べて、ドリンクも「もういいです・・」というぐらい飲んだっぽくて、かつ前夜に許容を超えて飲んだ反省もあったので、会はまだしばらく続くようだったけど、先に帰ることにした。

この時、ほんとはまだ何人か声をかけたい人もいたのだけど、つくづく思ったのは、「声かけても話すネタがないな・・」ということで。こちらはたしかにその人を知っているけれど、その「知っている」こと以外に話題がない。

僕としては、たんに面識を持ちたいとか、お友達になりたいという願望を持っているわけではなくて、どうせ話すなら楽しい、意味のある話をしたい。形式的に、名刺交換するように、あってもなくても何も変わらないような言葉をただ交わすなんて、体力と時間の無駄ではないか? と思ってしまう。僕としてはその人の友達や知り合いという「ポジション」を得たいわけじゃなくて、少しでもいいから何か話していて新鮮な気持ちになれるような、楽しい思いをしたいし、そのような思いをしてほしいとも思う。だけど、ぼくはそのための道具を何も持っていない。だから、今後もしそういう物を手にしたなら、その時にあらためて声をかけたい。と思った人が何人もいました、という話。

ということで自分が辿った前夜祭&第1日の様子は以上のような感じですが、同日の詳細は以下の渾身の技評レポートにて堪能できます。gihyo.jp

2日目&総括的な内容は次号にて。note103.hateblo.jp