訪問勧誘に慣れる必要

ひさしぶりに骨のある訪問勧誘に遭遇した。押し売りのような詐欺のようなタイプの人たちだけど、それでもいろんな人がいて、こちらがインターホン越しにまったくその気がない、引っかかる気配がない、という感じを漂わせるとすぐに諦める人もいる一方、今日の人は「いやあ、この地域の皆さんにお知らせしてるんですよー」とオフィシャルな感じを演出しつつ(もっとタチが悪ければ普通に嘘も混ぜるのかもしれないが)、「お忙しいようでしたら後日伺うのでご希望のお時間を・・」とか具体的なことを言ってみたり、最後のほうには「え? なんですか?」とあたかもインターホンが不調であるかのような(これはよく出てくるのでマニュアルにあるんだろう)例の技も繰り出し、必死な感じではあった。

まあ、よくよく考えれば引っかかる気配のない相手に時間をつぶすのは効率が悪い。だからそんなことをするぐらいならすぐに諦めてもっと上手くいきそうな相手を探したほうがいいんじゃないか、つまりそれだけ必死ということはその筋としては素人に近いのかな、とも思えるが、一方で勧誘のあしらいに慣れている、と自分を過信している人のほうがちょっと違う角度から押しただけで簡単に引っかかる、ということもあるのかもしれず、粘りの効用がいかほどか、というのは他人事ながら判断が難しい。

ぼくは大学に入って一人暮らしを始めた最初の頃、読売新聞のしつこくて質の悪い勧誘に粘られて1ヶ月分とってしまったことがあって、それが今でもほとんどトラウマになっているが(だから他の新聞がどうかにかかわらず今後も一生読売新聞を購読することはない)、でもそのたった一ヶ月の購読によって「勧誘にどう対応すべきか」ということはすべて分かったとも言える。授業料とは言いたくないが、その購読料をそう呼ぶことは出来なくもない。
実際には、その購読をさせられた瞬間にすべてが分かったわけではなく、その後もいろいろな勧誘者からいろいろな嫌な目に合わされてくる中で「なるほど、こう応対すればいいのか」ということが徐々にノウハウとして蓄積され、ある意味対処法が洗練されてきたわけだけど、やはりその土台にはあの読売新聞のことがあったのだと思う。ムサビ近くに住む大学生(のとくに新入生)は今頃、大丈夫なんでしょうかね。このぐらいの季節(寒くなり始める頃)もひどかった気がするなあ。

勧誘に対してはまず、ドアを開けないこと。それに尽きる。どんなにいい話だと思っても、「向こうから突然来てる」時点で状況は異常である。そのことをまず大前提に置かなくてはいけない。
ドアを開けなければ、相手のモチベーションは時間の経過につれてどんどん落ちてくる。向こうのエネルギーは「相手にされている」という実感を得ることで(それを摂取する生物のように)上がっていくので、それを与えてはいけない。
もし万が一、それでもどう考えても自分にとってトクだと思われる話なのであれば、「時間のあるときに詳細を調べてこちらから連絡します」とか言うようにすべきである。名刺やパンフレットをポストなどに入れたいと言うなら入れさせても良い。しかしけっしてドアを開けてはいけない。
名刺やパンフなど、ある意味で次に繋がる要素を与えることにより、再訪問される可能性はもちろんある。しかし、少なくとも状況を左右する「ハンドル」を相手に握らせなければ大きな傷にはなりづらい。「連絡はこちらのタイミングでする」という線をけっして外してはいけない。

オレオレ詐欺(現・母さん助けて詐欺)の話などを聞いていると、本当のプロにかかったらこの程度の対処法ではまったく太刀打ちできないだろうとも思う。プロの犯罪者に狙われたら、あとはどれだけ被害を減らせるかという問題になって傷をゼロにすることは難しいかもしれないが、それでも軽傷を減らすことはトータル的に人生に有効なはずだと思う。